「中国残留日本人」という問題

日本政府が公式に認めている中国残留日本人は7,000名あまり。身元が判明した人はごくわずかで、さらに残留日本人と知らずに中国で生きた人も多くいると考えられています。日本に帰国することができた人でも、長期間中国で生活していたために日本語に不自由がある人がほとんどで、また経済的・社会的にも弱い立場に置かれていました。

平成14年(2002)には残留日本人の9割が原告となった国家賠償請求裁判が、東京・大阪など15つの地方裁判所で行われました。原告側は残留孤児の被害が戦前・戦後の日本政府の政策によって生み出されたものであると主張。戦後早急な引き揚げ政策や、帰国後の生活自立のための支援策を取るべきだったが行わなかったとして賠償を求めました。一方で国側は残留孤児の被害はソ連侵攻によって引き起こされたものであると主張。その上で残留孤児の被った被害は「国民が等しく受忍すべき戦争被害」であると反論していました。

15つの裁判所で行われた裁判のうち、勝訴したのは神戸地裁のみ。他の7つの裁判では原告の訴えは却られ、その他の地裁での裁判は取り下げられました(国家賠償訴訟)。

この裁判を期に、帰国した残留日本人に対しての「新支援法」が制定され、現在も運用されています。しかし戦後80年、日中国交正常化から50年が過ぎた現在、「帰国者1世」の支援だけではなく、中国で生まれ育ち「1世」と共に来日した「帰国者2世・3世」や残留日本人の配偶者が抱える課題への支援が求められています。