事件

終戦間際の8月9日、ソ連侵攻によって、開拓団の多くはソ連の侵攻から逃れ日本に帰国するべく、大都市や港湾都市を目指して逃避行を始めました。 その過程でほとんどが現地中国人やソ連兵などによって攻撃・暴行を受け、集団自決を迫られた開拓団もありました。 一方で現地に留まった開拓団も同様に現地住民・ソ連兵の襲撃を受け、多くの人が亡くなりました。 これらの凄惨な出来事を、総称して「事件」と呼びます。

ここでは数多ある事件のうち、特に被害が大きく日本社会でも良く知られたいくつかの事件を取り上げています。 それ以外の事件について調べたい方は『事件一覧』をご覧ください。

佐渡開拓団事件

関係する開拓団

  • 佐渡開拓団(東安省 勃利県)
  • 万金山高社開拓団(東安省 宝清県)
  • 尖山更科開拓団(東安省 宝清県)
  • 東索林埴科開拓団(東安省 宝清県)
  • 東横林南信濃開拓団(東安省 宝清県)
  • 南哈嗎笠間開拓団(東安省 宝清県)
  • 北哈嗎阿知開拓団(東安省 宝清県)
  • 清和開拓団(東安省 虎林県)

概要

佐渡開拓団の本隊が引き揚げのため出発した後、8月27日ソ連軍による攻撃を受け、戦死多数。 万金山高社開拓団以下7開拓団が佐渡開拓団に避難していた最中の攻撃であり、1464名の死者を出した。

犠牲者等

  • 佐渡開拓団、70余名死亡。
  • 万金山高社開拓団、500余名死亡、ほぼ全滅。
  • 尖山更科開拓団、400余名死亡、ほぼ全滅、隊長はソ連兵により射殺。
  • 東索林埴科開拓団、200余名死亡、ほぼ全滅。
  • 東横林南信濃開拓団、78名死亡。
  • 南哈嗎笠間開拓団、60名死亡。
  • 北哈嗎阿知開拓団、20余名死亡。
  • 清和開拓団、125名死亡。

参考資料等

  • 満州開拓民悲史―碑が、土塊が、語りかける(高橋健男, 批評社 , 2008)
    [Amazon.co.jp 日本の古本屋]
  • 満蒙開拓史(全国拓友協議会, 1980)

千振開拓団事件

関係する開拓団

千振開拓団(三江省 樺川県)宮城部落

概要

本隊は8月13日に避難を開始するも、宮城部落とその他一部部落の数名のみが現地残留。 16日に青森部落に残留していた者が依蘭へ避難する報に触れ宮城部落も避難を決定するも、翌17日に松島部落に向かった数名が現地人の襲撃にあったことから避難を保留し対応を協議。 その日の夕方までに宮城部落が襲撃に遭い、死者多数。 母子55名は隣接する飛行場に逃れたが、毒服自殺を試み42名が死亡。

犠牲者等

在団員190名(うち応召者36名、その他不在団員5名)のところ、死亡確認116名、安否不明4名。

参考資料等

  • 満蒙開拓史(全国拓友協議会, 1980)
  • 宮城県開拓団の記録(鈴木文男, あづま書房, 1977)
  • とちぎ戦後70年 第一部 伝えねば <12>-終戦- 記憶ない戦争が人生翻弄(下野新聞, 2015/2/27)
  • 千振開拓の歴史振り返る 入植70周年記念式典に130人 栃木(産経新聞, 2016/11/08)
  • 「私と満洲」中込敏郎(平和記念展示資料館)

葛根廟事件

関係する開拓団

東京荏原開拓団(興安南省 西科前旗)

概要

東京荏原開拓団はソ連参戦に伴い、興安街の関東軍と共に北方の扎賚特旗を目指して避難していたが、14・15日にその経由地である葛根廟(竜江省洮南県双明子)においてソ連軍の戦車・戦闘機による攻撃を受けた。 関東軍わずか70余名で開拓団民千数百人を守ることはできず多くが死亡。 また、毒服・自刃するなどして380名以上が死亡した。

犠牲者等

東京荏原開拓団、戦死・自決・行方不明合わせて620程度。 関東軍にも甚大な被害。

参考資料等

  • 満蒙開拓史(全国拓友協議会, 1980)
  • 終戦前日の「葛根廟事件」(文春オンライン, 2021/05/04)
  • コルチン平原を血に染めて : 少年が目撃した葛根廟事件(大嶋宏生 全国興安会通信社, 葦書房, 2000/08)
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  • 葛根廟事件の証言 : 草原の惨劇・平和への祈り(興安街命日会編, 新風書房, 2014/08)
    [Amazon.co.jp 日本の古本屋]
  • 蒼空と草原 : 殺戮の草原 葛根廟巡礼記(大櫛戊辰, 崙書房出版, 1996/06)
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  • 母よ、友よ広野で眠れ : 葛根廟事件の真相(森留美子, 日中出版, 1988/08)
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  • 殺戮の草原 : 満州・葛根廟事件の証言(大櫛戊辰, 東葛商工新聞社, 1976/08)
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